北のフィールドノート

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2013年 11月 23日

カタツムリの右巻きと左巻き その1

「戦略的創造研究推進事業 研究成果 JSTニュース」に「単一の遺伝子で鏡像の種が進化した」というのがある。

『日本で進化したグループのカタツムリ20種には4種の左巻きと16種の右巻きが含まれる。』

『カタツムリでは単一の遺伝子が原因で内蔵を含めて体中の左右が全て反対の、いわば鏡に映った形をした鏡像の種が、新たに何度も進化、存続したことを、分子系統と行動生態の手法により実証した。さらに、左巻きのカタツムリ4種はすべて、単一の右巻き祖先から進化した』

分子系統樹で見れば

ムツヒダリマキ(E. docorata)のなかま (ムツとイワデとトバとナンブ)

オオタキマイマイ(E. grata)のなかま(オオタキとエムラとエチゴとミチノク)

ミヤマヒダリマキマイマイ(E. scaevola)のなかま(ミヤマヒダリとヒラヒダリとミカワ)

ヒダリマキマイマイ(E. quaesita)のなかま(ヒダリマキマイマイとムラヤママイマイとヘグラマイマイ)

が単一の右巻きから進化したということらしい。



それはムツヒダリマキ(E. docorata)のなかまとオオタキマイマイ(E. grata)のなかま

それと同時に、ミヤマヒダリマキマイマイ(E. scaevola)ヒダリマキマイマイ(E. quaesita)のなかまの祖先とあわせると、3つに分かれたあと

ミヤマヒダリマキマイマイ(E. scaevola)のなかまがわかれ

その後ヒダリマキマイマイ(E. quaesita)のなかまが出てきている。

そして、ヒダリマキマイマイ(E. quaesita)は何回か E. quaesitaに分かれているが

その内の分子系統樹の三系統において、なんと右巻きのアオモリマイマイ(E. aomoriensis)同一種が別個にが出現しているのである。



簡単に言ってみれば、右巻きから4系統の左巻きが出現した。

さらにそのうちのヒダリマキマイマイ(E. quaesita)から3回別個に右巻きのアオモリマイマイ(E. aomoriensis)が出現ということである。
 

もう二系統、右から左になり、それがまた右になったものがある(ヒラマイマイのなかまとクロイワマイマイのなかま)がそれはさておき

青森県津軽半島の アオモリマイマイ(Euhadra aomoriensis) と
青森県下北半島の ヒダリマキマイマイ(Euhadra quaesita) (同定は私)を比べてみることにした。

((ヒダリマキマイマイは秋田県には生息することはわかっているが(秋田県の陸産貝類 川口洋治)青森県の確かな記録は不明なのである。))

下北半島のヒダリマキマイマイ(Euhadra quaesita) (同定は私)の分布はきわめて偏っていると感じている。東半分でみることはない。

そして、海を隔てて生息する津軽半島のアオモリマイマイ(Euhadra aomoriensis)のものが、これこそ鏡像関係のものと思えたのでここに載せてみることにしたのです。
まず、アオモリマイマイ と ヒダリマキマイマイです。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_23495727.jpg


このアオモリマイマイを下に置きます

カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_23573539.jpg


次はヒダリマキマイマイの正像です
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_031780.jpg


次は上のヒダリマキマイマイを鏡像にして切り出したものです。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_23574986.jpg


その像をアオモリマイマイの上に重ねてみました。まずヒダリマキマイマイを透明にしてしまってから
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_06210.jpg

順次鏡像の濃さを上げていきます。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_07413.jpg
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_08382.jpg

次は上も下も65%の濃さです。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_14521573.jpg

色合いをかえてみます。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_2025997.jpg

カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_07514.jpg
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_085175.jpg

2つを並べてみます。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_20253457.jpg


完全には重ならないのですが、きわめて近いものとみることができます。
これほどの色帯もふくめて近似的なものは下北半島内ではないように感じています。

海をへだてていますが、これこそ鏡像関係にあるヒダリマキから出たアオモリマイマイなのでしょうか。

ただ、私が感じるところ、下北半島に孤立して分布するヒダリマキマイマイからどうやって津軽半島のアオモリマイマイが出現したのか非常に興味あるところです。

アオモリマイマイは両半島の標高の高くないところには全域にわたって分布します。
下北半島のアオモリマイマイはこれほどは似てはいないのです。

2018年11月1日補足します。
秋田県南部のヒダリマキマイマイとアオモリマイマイを同様に並べて見ましょう。
ついでに、青森県中部のアオモリマイマイの写真も並べてみましょう。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_00370267.jpg

どうでしょうか。アオモリマイマイは同じとはいえませんね。
では青森のアオモリマイマイが秋田のものとどのように異なるかを補助円をいれて写真で示しましょう。
カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_23483578.jpg

カタツムリの右巻きと左巻き その1_e0039759_23484139.jpg

外縁に接するような円を2つ描いて、内側Rと外側Rの比をみますと、青森のほうが外にいくほどR比が大きいことが判ります。
青森のアオモリマイマイと秋田のアオモリマイマイは系統が異なる可能性は大と私は考えています。
補足

東正雄の原色日本陸産貝類図鑑など過去には、アオモリマイマイの学名はEuhadra senckenbergiana aomoriensis とし

クロイワマイマイEuhadra senckenbergiana の地理的亜種とされてきた。

しかしこのニュースにあるように

 [Single-gene speciation by left-right reversal. Nature 2003 (October 16)]

『アオモリマイマイは殻がよく似ているヒダリマキマイマイが左右反転した結果、鏡像の種として最近進化したものであることが判明した』
とし、分子系統樹などでは E.aomoriensis にしている。



by snowmelt | 2013-11-23 00:24 | 考えることそれぞれ | Comments(0)


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