北のフィールドノート

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2013年 04月 06日

銅ゴケの不思議 佐竹研一著

佐竹さんは私の敬愛する人です.

年は3つぐらい上で,大きな人です.(私に比べれば誰でも大きなひとなのですが)

「佐竹さん」などと気安く呼んでいますが,

立正大学の地球環境科学部の教授さまで本当は気安くは呼べないのですが,以前からのつきあいで図々しくもずっと佐竹さんで通しています.

この度,佐竹さんが 銅ゴケの不思議 という本を出版しました.(2013年3月27日)
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「銅ゴケCopper mossとは重金属を高濃度に蓄積するコケ植物の総称で,その研究を中心に紹介」している本です.
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「コケ植物重金属蓄積30年の研究成果を中心に雑感を加えて」,一般の人にむけて書かれています.

佐竹さんは「重金属を特別に蓄積する植物はないか」とのテーマが研究所内で通り,

その植物を「発見」する研究の旅に1980年4月に出発したのでした.

「どれだけ植物を集めて分析すれば,発見できるかの保証はなく,見つからないからと諦めてしまえばそこで未発見のまま終わってしまう研究の旅である.」

1980年の「暮れまでに全国から集めた相当数の試料を分析したが,実は目的とする重金属を蓄積植物を発見することは出来なかった」

来年度もこれを続けられるか心苦しく,念のため,それまでの相当量の分析スペクトルを見直していた.

そこで「1試料だけ少し気になるスペクトルがあるのに気がついた.」

それは,1980年9月に採集とある,恐山の頭無川(かしらなしがわ)の植物だった.

そして,はしょると,もっと源流のその植物,コケだったのだが,チャツボミゴケだったのだが,それには,高濃度の水銀が蓄積されているという世界初のことが分かったのだ.それが佐竹さんの銅ゴケ研究の不思議の旅のはじまりだったのです.

1980年5月頃だったと思いますが,突然田名部高校の生物教師として勤務していた私のところに手紙がきました.「恐山の水をポリ瓶に2リットルとって」ほしいとの依頼だったと思いますが,その手紙が国立公害研究所総合研究官の佐竹さんとのはじまりでした.「ハイよ」と車を走らせて採ってきて,水を送ったのです.

忘れたころ,9月に恐山に行きたいが案内してくれますかとの手紙があったのです.

「ハイ,OKです」と言って,大湊駅に降り立って現れたのがにこやかな大きな佐竹さんだったのです.

一緒に宇曽利湖の周りを歩き,佐竹さんは泥に手を突っ込みミズバショウの根をポリ袋に入れる.

泥にまみれあるいはしたたる泥手を流れる沢で洗いもせず,黒縁の角形メガネの奥の眼はにこやかに土泥からでている植物を採集している.

私はどれこれ手伝いはしていません.

ただ,頭無川のところに来たとき,私は湖に流れこむ沢の中でこの沢のなかにだけ水中植物があることを知っていました.

藻ではないけれどなにか分からないその植物を「ここだけにある植物なんですが,種が分かったら教えて下さいと手渡し示したのです.

これが,実はチャツボミゴケだったのですが.(当初はミズウロコゴケでしたとの手紙がありました.田名部高校生物部誌青苔(あおごけ)15号p108に書いておきました.)

「1試料だけ少し気になるスペクトルがあるのに気がついた.」

というのがこのチャツボミゴケだったのです.

いや,ムラサキヒシャクゴケだったかもと思います.

今でこそ,佐竹さんのおかげで,あそこには3種類の水中コケがあるという事が分かりましたが,ムラサキヒシャクゴケのほうが,圧倒的に多いのではないかと思っています.

ですから採った確率からするとチャツボミゴケにあたる確率より,ムラサキヒシャクゴケを採ってしまう確率がきわめて高いと考えられます.


佐竹さんは土に生えている植物をおもに採集していたのではなかったかと観察されます.

でもこのときの私のこれはなんという植物なのか知りたいということがなければ,

水中コケはまだ,世の人の知らないところでせっせと水銀を蓄積していたかもしれないのです.

こう考えると,私もなかなかやったのじゃないと微笑みたいのですがねーー.


この前,佐竹さんがお話をしてくれました.

『ボクは夢を見ました.

散歩していると,誰かが呼んでいるのです.

後ろを振り返っても誰もいない.

でも呼ぶ声がする.

下をみると石ころが呼んでいるのでした.

「僕はいつも呼びかけているんですが,なかなか誰も気づいてはくれないんですよ.」

なかなかいい話でしょ(笑い)』

こんな具合なのです.

「銅ゴケの不思議」は,どういうふうに研究していったか,研究の成果とつぎつぎ連続する疑問を写真,図,スペクトルグラフなどで,示しつつ書いています.

銅ゴケの「不思議」という感覚はなんなのでしょうか.

不思議という感覚はその人の中で湧き出てくる固有のものです.

なにを見たって不思議なことはありはしないという人もいれば,そうでない人もいる.

佐竹さんは重金属蓄積植物を探すという目的から,

ものを見て,不思議・分析・不思議・電顕・不思議・分析・不思議・・・不思議・と旅をつづける自然科学の旅人なのだと感じています.

何度か私の部屋に入って佐竹さんは,私の部屋にこういう名称がいいと言ってくれました

「大学を退官した先輩でナントカ学房と名乗っているひともいるけど,おーやぎさんのは巣だね,がくそう学巣というのがいいね.」それからあるときビールを吞みながら「自然学巣がいいね,下北自然学巣がいいね.Field Science Nest. 所属は英名もつけたほうがいいから,Shimokita Field Science Nest 下北自然学巣にしよう.かんぱーい」

ということで,私はそれ以来,下北自然学巣の主宰ということにしているのです.

本にはホンモンジゴケ,チャツボミゴケ,ムラサキヒシャクゴケ,ウカミカマゴケ,ホソバミズゼニゴケ,アオハイゴケ・・・・の不思議,生物モニタリングなどが出てきます.

表紙の小さい写真ですがホンモンジゴケの拡大写真は青森市の蓮心寺で私が昨年撮影したものを使ってくれました.中の写真にも使っています.

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つくばの株式会社イセブというところからの出版です.ISBN978-4-900626-10-2 c3040とありますので取り寄せれば買えると思います,2000プラス税でしょう.
昨日,家族のなかで自分一人だけ「出版記念カンパーイ」と孫のカルピスのコップとぶっつけてビールをあけました.



追記・佐竹さんと「ボクは,こんどコケの本をつくることになりました」と電話で話すうち,

「ボクはホンモンジゴケのいい写真がないのです。どんなレンズがいいですかね。インターネットでホンモンジゴケのマクロ写真を出してあるページがありますが,何のレンズをつかってるのかね。」

調べてみれば,トップページのカメラレンズはキャノンのMP60マクロという高い,いいレンズですよ。それでも,普通のマクロレンズでも撮れると思いますよと答えておいた。

その瞬間から,私はホンモンジゴケは撮っていないけれど,撮ってみるかと決心したのでありました。

葉は2mm内外のだ円状披針形なので,だいたいの写真はコロニーばかりで,一本の姿(茎葉体)がコロニーの中でわかるようなのは,なかなか無い。

よし,これを撮るにはと,私はカメラを考えたのです。

だいたい,APS-Cサイズで1600万画素が普通なのところ,2430万画素のSONY NEX7がいいと決めたのです。なんという衝動買い。

これには,今までのオリンパスのフィルムカメラのレンズが難なくつくし,流用がきく。
果ては,もっている機材でアオリも出来るはず。ということで2430万画素でホンモンジゴケを撮りに出かけたのでした。

表紙の写真は,葉が細胞一層で後ろが透けて見えるところをとっているのですがそこを見てほしいなー。

オリンパス・フィルムレンズ時代のOM80マクロにベローズをつけて,EマウントにしてSONY NEX7で,リモコンシャッターで振動をおさえています。

by snowmelt | 2013-04-06 13:20 | コケ類 | Comments(0)


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